高齢者の咀嚼に関する研究/穴井美恵 教授
日本は急速に高齢化が進み、日本人の平均寿命は飛躍的に伸び、世界有数の長寿国となっています。人生 100 年時代といわれる昨今、健康に活躍し生活することのできる社会をつくることが国民的な課題となっています。そのなかで「食べる」ことは、私たちの心身の健康を維持するために大切なことであり、人としての尊厳を保ち、「健康長寿」につながります。この「食べる」ことに必要なことは、「噛む(咀嚼する)」ことです。
高齢になると、う蝕や歯周病の進行により歯を失ったり、舌の運動機能、咀嚼能力、唾液の分泌、味覚なども低下したりします。これらの機能低下は動脈硬化性疾患や認知症の発症と関連があります。さらには、口腔機能の低下が心身の機能低下まで繫がる負の連鎖が生じてしまうことも明らかになってきています。そのため、高齢者がいつまでも健康でおいしく食べ続けるための咀嚼能力や口腔機能向上に関する研究をしています。何歳になっても健康であり、おいしく食事が楽しめることを目指して、主に咀嚼の重要性や、「咀嚼と生活習慣病との関連」「咀嚼と認知症との関連」「オーラルフレイル」「介護予防」などといったことをテーマにして研究に取り組んでいます。
がんサバイバーの自己治癒力に関する研究、補完療法の症状緩和の研究、仏教と看護の研究/坊垣友美 教授
補完療法の疼痛緩和効果の作用機序をがん患者および成人健常者において神経生理学・神経心理学的に明らかにしています。この結果、看護独自の介入は個人に応じて深部脳活動度を最適に調整して症状のターゲットになる「疼痛」を緩和したことから、介入のエビデンスを得ただけでなく、看護介入が急性期から終末期にいたる健康のキーワードとなる自己治癒力へ干渉し得ることが示唆されました。またがんサバイバーの精神的治癒力=生きる力をM-GTA:Modified Grounded Theory Approach で解明してスピリチュアルや仏教との関連で考察をしています。今後もさらに自己治癒力を追究し、医療依存度の高い対象から地域においても幅広く、QOLの向上を視野に入れた全人的医療に向け根拠のある看護介入を考えていきたいです。
笑いが健康に与える影響に関する研究/神谷智子 講師
高齢者がいつまでも笑って健康を維持できるような生活の工夫や認知症高齢者への笑い療法の確立を目指した研究活動に取り組んでいます。
がんであっても自分らしく生きることを支えるための研究/森京子 講師
主にがん看護・緩和ケア、人生の最終段階における意思決定支援について研究しています。わが国においては、がん患者は病状が進行し、これ以上、治療の効果を期待することが難しくなると症状緩和に徹することになり、患者の多くは急性期病院から退院することになります。がんが進行し危機的な状況下における療養場所選択の意思決定は、患者や家族にとって容易いものではありません。そのため、人生の最終段階にあるがん患者の意思決定を支える看護実践モデルの開発に取り組んでいます。また、がん患者の療養生活を支える急性期病院の看護師や訪問看護師を対象とした研究に取り組み、がん患者と家族に質の高い看護を提供できるようにケアの受け手側、提供する側の両側面から研究を進めています。
集中・救急における終末期・熱傷家族看護における研究/伊藤美智子 講師
救命救急センターやICUなどにおける終末期の看護に関する教育や、熱傷家族看護について研究をしています。生命の危機状態にある患者は、意識がないなどの理由で自分の意思表示をすることが難しかったり、患者と家族で希望が違ったりといった状況にあります。また、急な事故や病気の悪化も多く、患者も家族も現状を受け入れられないといったことも起こります。そういった状況に対し、看護師がどのように介入し、支援していくかについての教育プログラムの開発に取り組んでいます。また、終末期以外にも、重症となった時に様々な看護介入を必要とする熱傷についても、家族にどのように介入すべきか、具体的な看護実践をサポートするための研究に取り組んでいます。
看護学生用の道徳的感受性尺度の開発および尺度を活用した効果的な看護倫理教育の開発/滝沢美世志 講師
専門職として質の高い看護実践をするためには道徳的感受性のもとに倫理的意思決定が必要です。そのため看護教育は、看護学生が道徳的な問題の存在を見過ごすことなく気づき、顕在化し、道徳的意思決定、および意思決定に基づく質の高い看護実践ができるために道徳的感受性の涵養が不可欠です。これは、看護の専門職業人として、患者ケアの質の向上につながります。そして必要に応じて道徳的感受性の程度を定量的に評価することが求められます。私は、看護学生の道徳的感受性を評価するための標準ツールとして広く活用できる道徳的感受性尺度の開発に取り組んでいます。また、開発した尺度を活用した効果的な看護倫理教育を開発することに取り組んでいます。
超高齢者の支援に関する研究/白砂恭子 助教
高齢化率の上昇に伴い、85歳以上の超高齢者が増加すると予測されています。超高齢者が健康に生活を継続できるよう、看護師が実践している支援を調査しています。
関節リウマチ患者の自己効力感に関する研究、慢性疾患をもつ在日外国人看護に関する研究/佐藤由佳 助教
教員になる前は、看護師として整形外科病棟、呼吸器科病棟などに勤務し、特に関節リウマチ患者さんの療養生活を支える看護に興味を持つようになりました。慢性疾患をもつ患者さんが症状や感情の変化に対処しながら望む生活を送るための支援について研究しています。
大学では成人看護学分野で急性期看護・慢性期看護を担当しています。臨床での看護師経験を活かし、講義・実習を通して学生の皆さんの学ぶ力を支援したいと思います。